カベの向こうの女の子


でもあのにこやかな作り笑顔ができるのも、きっと才能なんだろう



俺には到底できない



そう思うと、つくづく教師向きだよ




「でも、あの教師、春菜の友達とできてるんだろ」



俺は言った



素直にあの先生を慕う春菜には、少し大人げなかったかもしれない



言ったあと、思った



春菜は不思議そうに俺を見た



「友達って…、愛ちゃん?」



俺が頷くと、春菜は眉間にシワを寄せる



「愛ちゃんが先生と?どこで聞いたの、それ」



「下校してるテニス部の女子高生が、言ってたのたまたま聞いた」



「…ふーん。どんな感じ?」



春菜の反応は意外だった



まず、仲が良いロングヘアーの噂は知っていると思ってた



話からして知らなかったようだけど、いつもの春菜らしくない



そう、大袈裟じゃない




興味がないわけではなさそうなのに、どこか見透かしたような雰囲気だ



知らなかったなら、目を大きくして驚くと思ってた



否定するなら、「そんなわけないよ!愛ちゃん彼氏いるもん」と言ってくると思ってた




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