カベの向こうの女の子


俺は怪訝そうに顔をしかめてしまった



「なんか…、副部長と先生絶対できてる、とかなんとか」



視線をずらして、思い出しながら言った



それから、春菜のほうに視線を戻す



春菜は目をふせて、スプーンを皿の上でこまねいていた



何故か春菜は黙ってしまった




俺はそんな春菜を見たことがなかったから、慌てた



「春菜、どうした?」



春菜は少し間をあけて、呟くように小さく言った




「それ、きっとあたしのことだ」



俺は春菜の言う意味が理解できなかった



「は?何が?」




「愛ちゃんじゃなくて、あたしなの」



俺は思わず、じゃがいもを丸のみしてしまった



息が苦しくなって急いで水で流す



「春菜が…、って、え?春菜、副部長?」




「うん。愛ちゃんも副部長。副部長は2人なの」





「ま…っ」



あまりの衝撃的な発言に言葉を失った




頭では一応理解できた



あの噂は春菜と神八のことだったのだ



ロングヘアーじゃない



だけど、一向に現実味が沸かず信じられない




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