カベの向こうの女の子
春菜は伏せていた顔を上げた
俺は頭が真っ白になって、なんだか見るものすべてピントがずれる
手から汗がにじみ出てきた
それから胸がざわざわする
「でも、嘘だから。あたしと先生仲良いから、みんな勘違いしてるだけ」
「へぇ…」
ため息とともに声が漏れた
胸のざわつきが徐々に収まる
「…でも、噂がたつなんて、どんだけ仲良いんだよ」
俺は何か言わなくてはいけない気がして、考える暇もなくポロリとそう言っていた
春菜の顔は見れなかった
「数学苦手だから、テスト前とか教えてもらってるだけだよ。あとは別に何もないけど」
「ふーん」
平静を装ったが、驚いたり安心したり慌てたり一気に色んな感情が沸いてでてきて、それを悟られないためにかなり混乱していた
「ショックだな…。噂があるのは知ってたけど、テニス部の子で、言ってる子いたんだ。あ〜あ…」
「でも、本当に何もないなら、そのうち噂なんてなくなるよ」
「そうだよね。それに先生と生徒だもんね。あり得ない、あり得ない。みんなそう言って楽しがってるだけかな」