カベの向こうの女の子

春菜は俺を覗き込んで、ニヤけた



「あ、いるんだ?」



「い、いない」



俺は早口で言った


俺の様子がおかしかったらしい


春菜は意地悪そうに笑った


「本当に?」



「まじ、まじ。」



「ふぅん」



春菜は意地悪そうな笑みとは一変、にこやかな優しい笑顔をした



そんなふうに見られると、腹の上部がこそばゆくなる


俺は自分の首筋を撫でた


触れたところが少し熱くなっていた



俺は静かに息を吐く










それからやむ無く春菜の門限の時間が近づいて、家まで春菜を送った




アパートに帰り、家のドアの鍵を開ける



ドアノブは外の冷気ですっかり冷えてひんやりする


それを回して部屋に入った


部屋は一応、片付けてある


おかげで色味のない殺風景な景色が広がってる



元々は雑誌とか服が床に散らかっていたけど、春菜が来ることがあるからなるべく片付けておこうと心がけている



物はあんまり持ってなかったから、片付けるのはそこまで大変じゃないし



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