カベの向こうの女の子
その後
今日は1日中ニヤニヤしていた
意識的にニヤニヤしているわけではない
いつの間にか口元が弛む
だって、今日は木曜日だから
そう、春菜に会える
俺は校門の前にいつものように立っていた
ときどき鼻水をすすりながら
実はこの前の須釜の一件で、少し風邪をひいたらしい
髪が濡れたまま、寒空の下出かけたんだから当たり前といえば当たり前だった
風邪なんてひいたのは久しぶりだったから、初めはなんだろうと思った
最近花粉が流行ってるから、それかと思ったが、花粉なら頭痛はしないだろうとわかって、風邪をひいたことに気づいた
俺はローファーが擦れる音が近づくのを、敏感に察知して振り返った
その期待にみちあふれたニヤけ顔は、すぐに凍りつくこととなった
「久しぶり」
そう言って俺の目の前に現れたのは、ロングヘアーだった
俺は慌てて顔を力ませて、無表情を作る
「…ああ」
それからロングヘアーがその場を去るのを待ったが、なかなか動かず黙って俺のそばにいる
俺はたまらずに聞いた
「なに?」
「今日、春菜来ないよ」