カベの向こうの女の子
彼女はもっと深く布団をかぶって言った
「うるさいなー!眠いのー」
俺は失笑した
自分の置かれている状況がまったく把握できていないらしい
「いいから、起きろよ。ちゅーか、起きてよ!」
しつこく俺は彼女を揺さぶると、やっと彼女は布団からチラリと顔を出した
「なに…?」
うっとうしそうな声で俺を初めて見た
見た瞬間、彼女の目がまんまるく大きくなった
次に勢いよく上半身を起こしたから、俺は驚いて布団に置いていた手をどかした
彼女はキョロキョロと辺りを見渡した
「ここ、あたしの部屋じゃない!」
俺は吹き出しそうなのを抑えつつ言った
「ここ、俺の部屋だし」
彼女は俺を見て、怪訝そうにする
「なんで?…だれ?」
「覚えてないの?」
すると彼女は首を傾げた
覚えていないらしい
俺は少し寂しくなった
ポケットからあの鍵を出して、彼女に見せた
彼女は俺を見てから、鍵に視線をおとす
少しの間、わけがわからなそうな表情だったが
「あ、ああ!」
と声を上げて俺を見た
相変わらず、鈴みたいな高い音だ