カベの向こうの女の子
部屋に上げると、ロングヘアーは「おじゃまします」と挨拶をして、靴を脱ぎ玄関の端に寄せた
春菜の友達だけあって、そういうところの常識は、ちゃんとしてるんだなと思った
「適当にして」
俺はそう言って、テレビの前に座ってリモコンの電源を押す
画面にニュースが映った
ロングヘアーは机を隔てて、俺の向かいに座った
本当なら春菜が座ってたかもしれないのに、と未練がましく思う
テスト勉強なら、俺は一緒にできないし、仕方ないけど
「一人暮らし?」
俺は頷いた
「へー、一人暮らしなのに、綺麗だね。ワンルームだけど、いいな」
ロングヘアーが素直に誉めたから、俺は意外に思った
なんでもかんでも悪態づくわけでもないらしい
「どうも。害ないだろ、別に」
「そうかもね」
ロングヘアーは小さく笑った
なんか不思議だ
普通にこいつと話してる
今まで春菜への忠告とか嘘とか、会話というより、一方的に釘さされるようなことしか言われなかった
だけど今は、前より会話らしくなってる