カベの向こうの女の子
「わかったら、帰って」
俺は単調に言った
愛想を込める余裕が、なかった
というのも、風邪がひどくなっているのが、わかっていたからだ
悪寒がさっきから半端じゃない
部屋の中で上着を脱いでいないっていうのに、寒気で体が震える
おまけに気持ち悪くなってきた
これはすぐに横にならないとまずいと感じた
「そんなにすぐ追い出す?」
ロングヘアーは不愉快そうな表情を浮かべる
今は嫌いとか好きじゃなくて、切実に帰ってほしい
このまま、この態度で振る舞える自信がない
ぶっ倒れそうだ
「ねぇ、顔色悪いけど」
答えない俺に、ロングヘアーは鋭く見抜いてきた
「いいから、帰れよ」
俺は声を振り絞った
だけど、ロングヘアーにはまるで効果なし
立ち上がったと思うと、俺の側まで寄ってきて、額に手を当ててきた
抵抗したいと思いつつ、気力がない
「やっぱり」
ロングヘアーはそう言って、俺の額から手を離した