カベの向こうの女の子
「悪かった」
俺はそう呟いた
ああ、本当に惨めだ
「ううん。てゆうか、無理矢理部屋に入ったこっちが悪いし…」
ロングヘアーのまともな返事に、確かにと俺は思ってしまった
でも手際よく対応してくれて、少しは感謝している
「もしかして、あの日が原因?」
「いや、違う」
俺は即答した
あの日が原因なのは、俺が一番わかっていたけど、そう言えば恩着せがましくなると思った
ロングヘアーには、なんだか謝ってほしくはなかった
「ふーん…、そういえば、体温計は?」
「そんなのないよ」
俺みたいな奴が律儀に体温計など、持ち合わせてあるはずもなかった
実は薬も、風邪をひいたと伝えたら、千秋が買ってきてくれたのだ
「そっか…」
俺は額に腕をのせて、それごしにロングヘアーの顔を見つめた
幸いロングヘアーは俺の視線には気づかず、床をみつめている
違和感だらけだな
俺はそう思った
俺の不調に親切をしてくれたとはいえ、警戒心は全然とける気配がない