カベの向こうの女の子
こんなに普通に会話するのも、心配されるのも、何か裏がある気がしてならない
今までが今までだから、側で安心できるはずがない
だいたい風邪をひいていたと知ったら、適当なこといってさっさと帰るかと思ってた
もちろん強気な捨て台詞も、しっかり吐いていくと思っていた
だいたいこうしてる間も、なんで帰らない?
ロングヘアーの長いまつげが、下をむいてるうちに顔を歪めてみる
彼女はマネキンみたいな作り物のような顔立ちだ
見れば見るほど、小さい女の子が好きなリカちゃん人形みたいに見えてくる
綺麗なのは認めるけど、愛らしいとは思えなかった
春菜は逆で、綺麗…とは、言わない
かわいくて愛らしい
「ねぇ」
ロングヘアーがぱっと瞼を上げるから、俺は慌てて視線を泳がせた
「ん?」
「この前の…、隣の部屋にいたから乱闘の様子なんとなくわかったし、声も聞こえてきたけど、須釜ってあの2人金で雇ったんだね」
「ああ、あれ」
まだ1週間もたっていないのに、なんかすごく前のことのように思えた