カベの向こうの女の子
ロングヘアーがいようといまいと、俺は寝る態勢に入った
俺が言ってからロングヘアーは黙っていた
さっきからつけっぱなしのテレビの音だけが、耳に入ってくる
ニュース番組から、バラエティー番組に変わって賑やかな音だ
するとプチッという音がして、その賑やかな音声は途端に途切れた
俺は目をつむりながら、ロングヘアーがテレビを消したのだと理解した
部屋がしーんと静寂になる
そして、ロングヘアーが水を打ったように囁いた
「ねぇ、あたし、邪魔するよ。ほっとかないから」
俺は黙って寝たふりを続ける
すると、ロングヘアーが少し俺に体を寄せてきたのが気配でわかった
そうかと思うと、背中を布団ごしに手をそっと置かれる
「だって、あたし、あなたのこと…」
ロングヘアーがそのあとを少しためらうから
俺はそれに続く言葉を、頭で呟いてみた
目障りだから… ?
それか
嫌いだから… ?
ロングヘアーが息を吸うのが小さく聞こえる
「好きだから…」