カベの向こうの女の子
だけど、確実にほっとしている自分がいた
彼女が俺に感謝の眼差しを向けるから、ラッキーとさえ思った
「ごめんなさい、寝させてもらっちゃって」
彼女はそう言って布団から出た
そしてキョロキョロと辺りを見渡す
彼女は自分のカバンから、俺が慌てて突っ込んだ携帯を取り出した
うすいピンク色の女の子らしい携帯だ
携帯を開いて彼女は目を丸くした
「え!もうこんな時間…っ!」
辺りを見渡していたのは、時計を探していたらしい
俺の部屋には掛け時計とかが一個もない
「こんな時間って…、まだ7時すぎだろ」
俺が言うと彼女は心底困ったような顔をした
「あたしの家、門限7時なの」
「まじで!早すぎだろ」
「でしょう?ほら、家から12件も電話きてる…」
彼女は落ち込んだ声で、俺に着信画面を見せた
見事に着信画面は"家"で埋まっていた
「もー、どうしよう。とにかく帰らなきゃ」
俺はその言葉に思いっきり反応する
「え!」
そう声を上げると彼女は不思議そうな顔をした
「…どうしたの?」
俺は慌ててうわべの返答をひねり出してみた
「いや、帰るの早くない?…えと、もうちょっと休んで行ったほうが…」