カベの向こうの女の子
俺が答える前に、千秋がすぐに言った
「お前はそんなこと気にしなくていーの」
「なんでよー」
「てゆか、春菜は年下だろ。ちゃんと敬語使えよな」
「だって、波くんがいいって言ってくれたから、いいんだもん。ねっ波くん!」
春菜に同意を求められて、俺は頭を縦にふった
すると春菜は千秋に勝ち誇ったように「ほらね」と言う
軽く言い合いをしてるっていうのに、なんだか和むなと思った
春菜のしかめっ面も千秋の上から目線も、見ていて飽きない
俺と優の喧嘩と比べたら、実に可愛らしい
「あ、そういえばさ、春菜の門限なんとかなんないわけ?千秋は門限ないだろ」
俺がそう言うと千秋は口をへの字に曲げた
春菜は千秋を見て、机を軽く叩いた
「そーだよ、門限どうにかしてよ」
なぜ千秋に春菜がそう強く言うんだろうと俺は不思議に思った
千秋に頼めば、親を説得できるのか、そう咄嗟に考える
千秋は飄々とした態度で言った
「もっと早くする?」
「違うよ、遅くしてって頼んでるの!」