カベの向こうの女の子
千秋は隣の春菜をチラリと見て、即答した
「駄目」
「お兄ちゃんってずるい!自分は好きな時間に帰ってくるのに、あたしには7時に帰らないと怒るなんてっ!最低、悪魔!波くんも言ってやってよ」
俺はその会話を聞いて、思わず「え」と声を漏らしてしまった
「なに?それって、…千秋が春菜の門限決めてるってこと?」
千秋は首を傾げた
「んー、意識したつもりはないっスけど、そう…ですねぇ」
俺は心の中で叫んだ
俺がしっかり守ってきた春菜の門限は、あの千秋の決めたものだったなんて
俺はてっきり、春菜の親父がすごく厳しいのかと思っていた
何回、いや何十回、その門限に腹を立てたことだろう
その原因が、いつも一緒にいた千秋だったなんて
世の中どうかしてる
亮太が隣で「7時は早いな…」とさりげなく呟いた
「千秋、門限遅くしてやる気ないのか」
少しは考えるかと思ったが、その予想と千秋の態度は裏腹だった
即答した
「ないです。世の中物騒なんで!」