カベの向こうの女の子
「えー…、あー、うわぁー」
千秋は軽く頭を抱えて、まとまりのない驚きをそのまま声にだしていた
相当、予想外だったらしい
千秋はあまり鈍感ではないはずだ
しかし、自分の身内のことだからなのか、考えてもいなかったようだ
可愛がっているみたいだから、もしかしたらショックなのかもしれない
「気づいたのはいいけど、千秋の前で言わなくたっていいだろ」
「え、でもさぁ、どうせじゃん。それに波は千秋にとったら絶対的だし。な、千秋?」
「そうだけど…。正直複雑っス…」
千秋は口をへの字に曲げて、亮太を見た
「そんなもんなのか?」
「だって突然すぎます」
「別に俺と春菜まだ付き合ってるわけじゃないし、複雑も何もないだろ」
俺が口を挟むと、千秋は顔を歪ませた
「まぁ、そうっスね。でも、おれ、なんか寂しいっす。春菜もとられそうだし、波さんは完全にとられた気がして」
亮太はすねたような千秋に苦笑いする
「お前どっちにも嫉妬してんのか?これが本当の三角関係?」
「なんだよ、それ」
俺は思わず顔をひきつらせてしまった
すると千秋は慌てて弁解した