カベの向こうの女の子
「波さん、引かないで下さい!そうゆう変な意味じゃないです!おれは波さんを一番リスペクトしてるから、だから…!」
「そんなに必死に言われなくたって、わかってるよ」
「…そうっスよね」
千秋は安堵のため息とともにそう言った
うつむいた時の瞼や鼻が、心なしか春菜に似ている気がした
兄妹ともども本当に正直者だなと俺は感じた
千秋なんか特に本当に素直だ
さっきの発言だってそうだし、自分の気持ちに実に忠実に生きてる
だから気に入られやすいけど、敵も作りやすい
好き嫌いがはっきりしているから
「でも、波、苦労してるだろ」
亮太が自分の黒い髪を撫でながら言った
「何が」
「何がって春菜ちゃん。ぽーっとしてるから」
「…ああ、まあ。ぶっちゃけ相手にされてない」
「まじっスか?春菜が?」
「うん、てゆうかむしろ、春菜はさっき話してた女子高生と俺がくっつけばいいと思ってる」
「うわっ、それキツイな」
「あの可愛い女子高生と波さんは、何なんすか?」