カベの向こうの女の子
確かに亮太が、林道と話しているところは見たことがあった
でもだからって、何とも思わなかった
だって亮太と林道は小学校から同じで、わりと日頃から仲良くしていたから
何かを怪しむ発想なんて俺にはなかった
ただ穏やかに流れる川を眺めるみたいに、俺はその様子を気にしたりはしなかった
俺という当の本人を置き去りにして、千秋も亮太も事実を知っていたなんて…
俺は狐につままれた気分になった
「俺ってまじで鈍いのかな」
「いや、美笑は仕方ないよ。あいつ慎重だし、波には気づかれないようにしてたよ。それより千秋、波に何か協力する気ないのかよ」
亮太はそう言って、話を切り替えた
もう春菜と俺の話は終わったと気を抜いていたから、俺は一気に緊張した
千秋も俺と同じで油断していたらしく、途端に顔を強ばらせた
「うーん…」
「別にいいよ、協力とか。女子高生じゃあるまいし」
俺はそんな千秋を見かねて言った
本音でもあった
「…あ、でも、これだけは言っておきます」