カベの向こうの女の子
「んで、やっと春菜は親から言われたんです、春菜は母さんと、おれは父さんと別々に暮らしてる、本当の理由。相当ショックだったみたいなんですよ」
千秋はそう言って目を伏せた
「それが原因?」
俺が聞くと千秋は俺を上目に見た
「はい、嘘嫌いはそれからです。別に暮らしてたんで、すぐにそうなったかとかはわかりませんが、多分…」
千秋がそう言ってから、俺も亮太も少しの間黙っていた
千秋も春菜もいつも天真爛漫で明るいから、そんなことがあったなんて意外だった
千秋については親が離婚していたことは知っていたにしろ、こうしてちゃんと話を聞いたのは初めてだった
だから何を言ったらいいのか、わからなくなった
亮太もきっと同じ気持ちだと思う
少し沈黙が続いて、階段を下りるトントンという音が上から響いた
俺と亮太と千秋はそれぞれに顔を見合わせる
すぐにリビングに春菜が現れた
千秋は春菜を見て、いつもの調子に戻った
戻ったというより、無理やり戻した…ように見えた