カベの向こうの女の子
吉永愛
ロングヘアーはソファーで足を組んで偉そうに言った
「聞いたよ。春菜の誕生日に会ったんだってね」
俺はロングヘアーを見ずにテレビに視線を送ったまま、口を開ける
「ああ、会ったけど」
ロングヘアーと会うのは、珍しいことではなくなっていた
会うというより、俺の休みを見計らってロングヘアーが押しかけてくると言うほうが正解かもしれない
初めは無理やり帰らせようとしたけど、玄関の前で延々と待っていたり着信を何十件も入れたりしてくるから、疲れてしまった
そのうち、ロングヘアーが勝手に帰るまで部屋に居させたほうが楽だと気づいた
だから最近はすんなり部屋に上げている
ロングヘアーが勝手に来るみたいに、春菜といる時は一変して別に気をつかうこともないから、風呂に入ったり好きなテレビを見たり、俺も勝手にする
「勘違いしてないよね?」
テレビを見ている後ろからそんな声がとんできた
「は?」
俺は一向にテレビから視線を移す気はない
俺の好きなバラエティー番組が流れているから