カベの向こうの女の子
「春菜の誕生日に会えたからって、自惚れてないよね?」
ロングヘアーは試すようでも冷やかすようでもなく、飄々とした態度で言った
相変わらずはっきりと言葉に出すな、と俺は呆れつつ答える
「別に自惚れてなんかいねーよ。たまたまだったし…」
「それならいいけど」
「いちいち堪にさわるようなこと、言うなよ」
「ごめんごめん、ほら、あたしだって心配だし。あなたが自惚れて、ますます春菜しか見なくなったら」
好きな人に物を言う態度とは思えないような、どちらかというと見下したようにロングヘアーは言った
俺は面倒くさくなって返事はしなかった
心配するならするで、もっと可愛らしくそれを言ってくれればまだマシなのに
と俺は思う
頬杖をつきつつ、悪い姿勢のままで俺はテレビ番組に集中する
だからロングヘアーがすぐ後ろにきていることなんて、気づかなかった