カベの向こうの女の子
俺の背中に寄りかかる彼女の顔は見えなかったけど、クスクスと笑っているのが聞こえた
「なに笑ってんだよ」
俺は目だけ後ろに向けてみたけど、彼女はほとんど見えない
「嬉しくて…。なんか笑っちゃう」
「別にさっきの褒めてるわけじゃないからな」
「わかってるって。わざわざ言わないでよ。それに変わる気なんてないから」
「嘘かよ」
「言ってみたらどう反応してくるだろうと思って…。今さら変えることなんてできないし、同じにしようとしたんじゃ春菜にはかなわないもん」
「よく、わかってるじゃん…」
俺は呟いてみた
確かに春菜と同じような性格だって、印象は良いだろうけど、靡かないと思う
だって、春菜を好きなのは性格とかじゃないから
俺は春菜そのものが好きなんだ
それがどこも欠けちゃいけない
春菜の周りのふんわりした空気でさえ、いとおしい
どこが好きとか上げれば上げられるけれど、一言で済む
春菜の存在が好き