カベの向こうの女の子
本当なんだ
最悪だった
春菜はその後悲しそうに顔を歪ませて、「あたし、帰るね」と小さく呟いて帰って行った
俺は腰がぬけたかのように、しゃがみこんでそのまま静止していた
時が止まったようだった
生きている心地がしなくて、血液が抜けたように感じた
頭の中では今日のやり取りが嫌なくらい、リプレイされる
何回も何十回も―
永遠に続く迷路みたいに次から次へと、リプレイ…、リプレイ…
俺は頭を抱えた
なんてこと、したんだろう
後悔だけじゃ足らないくらいに…
『嘘、だったの…?』
そう呟いた春菜の表情は今までに見たことがなかった
俺に対する信頼も愛着も何もかもが、崩壊していくような
そんな絶望の表情だった
俺はどうしたら良かったんだ
なんで"ごめん"しか言えなかったんだろう
俺も絶望だった
絶望すぎて、気が狂いそうになる
静かな夕暮れがまるで異世界のようで、孤独を感じた
その時、携帯の着信音がいきなり鳴り出して、俺は現実に引きもどされたようだった