カベの向こうの女の子
俺は思わず聞いた
「お前、春菜に何か言ったか?俺が誘拐したとかなんとか」
『は?誘拐…?あなた誘拐したの?』
そう逆に聞き返されて、すぐに思った
ロングヘアーじゃない
すぐにロングヘアーのいぶかしむ声が聞こえた
『なに、あなた、春菜となんかあったの?』
俺はなぜだかロングヘアーに、春菜にそう聞かれた経緯を話した
いつもだったら、絶対に言わないだろうに
動揺していて、判断力もきっと低下していて、話して気持ちの整理をしたかったのかもしれない
ロングヘアーはさすが…
客観的に物を見抜いていた
経緯を話すとすぐに、言ってきた
『春菜に言ったのは、きっと先生…。あたしは先生にしか言ってないし』
そう言われて一気に、まるで時計を逆回しにするように蘇った
春菜の誕生日にあいつから電話があった後の、春菜の目…
あの時じゃないかもしれないけど、春菜に言ったのはあいつに間違いない
確信した
ロングヘアーは続けた
『でも春菜、あなたのこと疑わなかったと思うよ。でも、先生に言われて聞くだけ聞いたんだろうね。春菜は先生の言うこと絶対みたいなとこあるし…』