カベの向こうの女の子


俺は思わず聞いた



「お前、春菜に何か言ったか?俺が誘拐したとかなんとか」



『は?誘拐…?あなた誘拐したの?』



そう逆に聞き返されて、すぐに思った


ロングヘアーじゃない




すぐにロングヘアーのいぶかしむ声が聞こえた



『なに、あなた、春菜となんかあったの?』




俺はなぜだかロングヘアーに、春菜にそう聞かれた経緯を話した



いつもだったら、絶対に言わないだろうに



動揺していて、判断力もきっと低下していて、話して気持ちの整理をしたかったのかもしれない



ロングヘアーはさすが…


客観的に物を見抜いていた


経緯を話すとすぐに、言ってきた



『春菜に言ったのは、きっと先生…。あたしは先生にしか言ってないし』



そう言われて一気に、まるで時計を逆回しにするように蘇った



春菜の誕生日にあいつから電話があった後の、春菜の目…



あの時じゃないかもしれないけど、春菜に言ったのはあいつに間違いない


確信した



ロングヘアーは続けた



『でも春菜、あなたのこと疑わなかったと思うよ。でも、先生に言われて聞くだけ聞いたんだろうね。春菜は先生の言うこと絶対みたいなとこあるし…』



< 205 / 219 >

この作品をシェア

pagetop