カベの向こうの女の子
ロングヘアーはそれから独り言みたいに呟いた
『先生そんなことしたの。意外に大人気ない…』
俺の心境とは裏腹に、ロングヘアーは実に落ち着いていてのほほんとしている
『あなたなんでそんなに慌ててるの?』
俺はその言葉に面を喰らった
なるべく平静を装っていたし、装えていると思っていたから―
電話ごしでもわかるくらいに俺はテンパっているのか
間抜けだな、そう自分を戒めたくなる
「慌ててねーよ」
『なら、いいけど。そんなこと言われても、事実じゃないなら、否定すればいいだけだしね』
当たり前のようにそう言うロングヘアーの言葉を聞いて、胸がピリピリと痛む
また春菜の悲しそうな表情が頭を過る…
『で、もちろん否定したんでしょ?』
なんだかつまらなそうな物言いに、俺はぐぅの音も出なかった
また、黙ってしまった
ロングヘアーは春菜より遥かに察しが良いのはわかっていたけど
その少しの沈黙で、すぐにこう言ってきた