カベの向こうの女の子
まさかというような失笑とともにだった
『何?否定しなかったの?』
数秒の沈黙の間でやっぱり、ロングヘアーは全てをさとったんだ
『てゆうか、誘拐したの…?』
携帯の向こうでロングヘアーが驚いているのが、よくわかった
いつもだったら、やっぱり本当のことなんてロングヘアーには言わないだろうな
だけどこの時だけは、
多分、きっと
動揺していて、判断力も低下していて、話して気持ちの整理をするしかなかったんだ
「俺、本当なんだよ。春菜を、誘拐した」