カベの向こうの女の子
家に帰ると、なんと、春菜が料理してくれた
狭い一度もまともに使ったことのないキッチンに春菜の後ろ姿がある
俺は幸せのまさに絶頂で、まじで恋人気分になった
こうして2人で部屋にいて、彼女が料理をしてくれる
恋人以外のなにものでもない
のぼせ上がっても仕方ない
実際、彼女ができても手作り料理を振る舞ってもらうことなんかなかった
作ってほしいとも思ってなかった
だけど、本当に今は嬉しい
鍋の準備が出来ると、コンロを机の上に置いて鍋をその上に置いた
その中に切った野菜とかを入れていく
なんだか春菜は手慣れてるように見えた
「サンキュ、なんか悪いな」
俺が言うと、春菜は鍋に蓋をしながら答えた
「ううん、全然これくらい。たくさんお世話になったもん」
俺は顔の筋肉が緩んだ
思わずニヤニヤしてしまう
「そんなことねぇけど」
彼女も、うふふっと笑った
「ねぇそういえばさ、名前なんてゆうの?」
「ああ、そっか。まだ言ってなかったな。荒木波(アラキナミ)…って名前」