カベの向こうの女の子
そして具を入れたお椀を、両手で俺に差し出した
「味見、してみて」
俺はそれを受け取って、豆腐を一口食べた
冷めていた体にじんわり温かいものがにじんでいく
豆腐は味がよくしみてて旨かった
「うん、旨い!」
「本当に?味付けちょうどいい?」
「ちょうどいい。料理、上手いのな」
俺が言うと、春菜は照れたように得意な顔をした
「まぁねぇ」
そして春菜もお椀に具をとった
「いただきまーす」
そう言ってから食べた
"いただきます"なんてなんだか久しぶりに聞いたと思う
育ちの違いを垣間見た気がした
春菜は食べてから俺に微笑んだ
「美味しいね」
春菜が言うから、さっきの育ちが違うことなんて忘れてしまった
それから食べながら、話し続けた
身の上ばなしとかくだらない話しもあった
春菜はよく喋るから、会話はあまり途絶えなかった
話から春菜は高校2年でテニス部だということがわかった
あとは学校の話がもろもろ
生活指導の先生が怖いとか、文化祭がどうだったとか