カベの向こうの女の子
すると意外にも春菜が優の腕を掴んで言った



「止めて!あたし、ただお礼しにきただけなの」



優は俺を睨んだ目付きのまま、春菜を見た



止めてくれ


春菜に嫌な思いさせて嫌われたくない



俺は苦しさで視界が霞みながらもそう思った




それから春菜がいきさつを話してくれた




そうすると優は明るい表情に一変してやっと理解してくれた




「そうだったの?早く言ってよー」



「ちょ…、わかったなら、首しめんの…やめてくんない?」



「あ、ああ!」




呼吸がまともにできなくなってたから、 俺は離されてむせた



春菜は背中を擦ってくれた


優と春菜の対称的な行動


こうも違うか




俺はため息をはいて、へたりこんだ



「大丈夫?」



春菜は隣に座って、俺を覗きこんでそう聞いてくれた



俺は前に手を出して、何回か頷いた




俺を危うく息を引き取りそうになるほど首を締めた張本人は…




「あんたでも、いいことするのね!やるじゃない!」



なんて、悪気のなさそうに笑ってる




いつもそうだ



俺は呆れつつ、優を見上げた



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