カベの向こうの女の子
俺と優
そう思うとなんだか、気持ちが楽になった
吹っ切れたとかそこまで行かないけど
そのうちすぐ忘れる
「あ、何もいらないって言われたけど、そうゆうわけにもいかないからクッキー作ってきたよ」
俺は春菜の声で我に返った
「ま、まじで!?」
「うん!よかったら食べてください」
春菜は俺にうなずいてから、優にも言った
「ありがと〜」
優は喜んだ
俺は俺のために作ってくれたクッキーを独り占めしたかった
だけど春菜がいる手前、お前は食わなくていいよとは言えなかった
春菜は可愛らしいラッピングされた袋を机に置いた
俺らはそれを開けて食べることにした
クッキーの真ん中にジャムが入っている
あまり手作りでは見たことのないクッキーだった
「美味しい!」
俺よりさきに優が言った
春菜は照れたように笑う
「よかった」
「ねぇ、ところで名前なんて言うの?」
そう聞かれて春菜は背筋を伸ばした
「藤原春菜です!高校はすぐそこの」
「ああ、やっぱり。あそこの高校ね。頭いいじゃない、波とは釣り合わないわ。頭も見た目も」
俺の気にしていることをずばり言われて、針で胸を刺された気分になった