カベの向こうの女の子

俺は優を睨んだ



優はそれにまったく気づかずに自己紹介を始めた



「気づいたかもしんないけど、私はこいつの姉ちゃん!荒木優」




優は俺を指差した



いつものことだけど、優は誰にでも上から目線だ



春菜は目を丸くしていた


「お姉さんですか。言われて見れば…似てるかも」



「似てねーよ」




そう言った俺を見て、優は顔をしかめた



「生意気でしょ、こいつ。姉ちゃんなのに呼び捨てするし」




お前みたいな姉貴がいたら生意気にもなるわ



優の特技は人を見下すことだって俺は思う



年が離れてるから小さい時は、よくいじめられたし


毎日のようにいじめられたから、本当よく覚えてる



パシリは日常茶飯事だし


試しに背負い投げされたり


喧嘩して、ゲーム、風呂に投げ込まれたり



ゲームだけじゃなくて、俺が、くそ寒い日に川に投げ込まれたり



ベランダからさかさずりにはさせられたり



熊が出る山に置いてきぼりにされたり



野良犬と一対一で勝負させられたり




思い出せばまだまだある



おかげで本当、たくましくなった



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