カベの向こうの女の子
春菜は下に伏せていた顔を上げた
「え!」
なんでそんな反応を見せるのか
驚かれてこっちが驚いた
俺の外見はそこらへんの黒髪のサッカー部とかバスケ部とかにはとても見えないのに
俺の金髪とピアスと目付きの悪さが、あいつらを心配させたんだろ
「俺、髪黒くしよっかな」
呟いただけなのに、大げさに春菜は言った
「なんで?綺麗なのに!もったいないよ。それに、地毛なんだから人に何言われようとくじけちゃダメだよ」
「は?」
地毛…?
「え?」
「地毛じゃないけど」
「えーっ!!本当に!?」
春菜は目をまんまるくさせた
だから驚いたのは、こっちのほうだ
これを地毛だと思うか
いや、俺が地毛だと言っても誰も信じない
やっぱり春菜は変だ
おかしい
「でも、地毛じゃなくても、気に入ってるならそれでいいよ」
春菜は慌てて俺に言った
俺のこれをはっきりと言葉で肯定されのは初めてだ
春菜は俺が誰にも誉められたところを誉める
嬉しいとかよりちょっとびっくり
寝癖がうっとうしいこの髪を春菜が綺麗というなら、そうなんだろう