カベの向こうの女の子
それにもう助けたってのが、事実になってる
彼女はまだあの目のままだった
俺も自然に顔がこわばる
「春菜も言ってるし、信じたい…だけど、あたし」
「なんだよ」
「あの日、忘れ物があるから春菜にさき帰ってもらってて、後から追いかけた…。その時車に…、助けたって言われればそうかもしれないけど、あたしには連れてかれたのかと思って」
ガーン…
俺は階段を下りるとき、あると思った最後の段がなかったような ヒュウとした下腹を掴まれたような感覚を覚えた
み、見られてた
まさか…目撃者がいたとは
誘拐と書かれた鈍器が、今度は俺にフルスイングで俺の頭を殴った
「チ、チガウチガウ。そんな連れ去るリユウないし。現に春菜は無事ジャンカ」
俺は動揺でカタコトになる上に、声が上ずった
そんな俺を怪訝そうに見るロングヘアー
ば、ばれたか?
くそ寒いっていうのに、背中に一筋汗が伝ったのがわかった
彼女は少しの間、沈黙のままだった
「まぁ、そう考えればそうだよね。学校行くときとか鍵渡したときとかに見たから、何か関係があるのかと思った」
ロングヘアー…、当たってるよ