カベの向こうの女の子
彼女はうつむいていた



「たまたまだから」




俺はそう関係はないことを言っといた



本当は大有りだが




ロングヘアーは風に吹かれる髪を耳にかけた



そして鋭い目付きでこっちを見る




「でも、助けたからって春菜に悪いことしないでよね」





おいおいおい



友達の恩人に向かって、なんて無礼な




肝が座ってんだか、無礼なんだか



わけわからん



助けたことは認めても、俺の人格は認めないわけ





「別にしねーし、してねーよ」





「春菜、あなたみたいな柄の悪い人と関わったことなんてないの」




え―…



柄が悪いとかはっきり言いすぎだろ、こいつ




さらに追い討ちをかけるようにロングヘアーは言ってきた




「春菜ぬけてるからみんな騙されてないか不安なのよ。ねぇなんで春菜に関わるの?」




核心的なこと聞いてきましたな



俺はすぐには言葉がでなかった



もちろん、理由は惚れているからだけど



はっきり言えば、余計、警戒される気がした



騙すとか騙さないとかそんな風に周りから見られてたのか




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