カベの向こうの女の子
多分これから愛ちゃんと仲良くなるどころか関わることすらなさそうだから、どうでもいいけど




春菜は本当に楽観的というか



のほほんとしてて



とにかくよく笑う



弱みなんて微塵もみせないような、それどころか他人の弱みすらどこかに飛ばしてしまうような…




今までに会ったことのない人間の種類だ





誰にでも好意をもたれそうなそんな存在なんだと思う



俺とはやっぱり正反対なんだ




そんないい子に一目惚れなんて、俺もなかなか見る目があるってもんだ




もし一目惚れしたのが"愛ちゃん"のほうなら、今頃、刑務所の中だな




俺はそれを想像してゾッとした




ああ、でも、そうだそうだ


誘拐したことはなかったことにしたんだ





愛ちゃんにあんなこと言われたから、また頭に残しちまった




つーことで、今度は振りかぶってあの山の果てまでぶん投げてやった




もう帰ってくんなよ




俺は心で呟いた




「そういえばさ、なんでお前は呼び捨てされてんのに、ちゃん付けしてんの?」



「んー、なんとなく…。あたしあんまり呼び捨て好きじゃなくて」




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