カベの向こうの女の子
俺は無表情のまま、"へー"と自分の中で呟いた
『残念だけど愛ちゃん彼氏いるよ』
あのロングヘアーは教師とできてるのか
さすがだな
美人はやっぱり大人と付き合うのな
その教師ってのは、この前のあの若い教師だろうな
俺にはあんな外道みたいに見といて、よく言う
自分だって十分やることやってんじゃねーか
あの教師だって…
誠実で真面目そうに見えても、結局は…ね
俺はあいつらの人間くささになんだか、笑えた
教師と生徒なんて、俺より浅はかな気がした
「波くん!」
俺は呼ばれて、我に返った
電灯の灯りが春菜の顔を照らす
相変わらずのかまぼこ型の目で俺に微笑んでくる
「おう」
「なんか考え事してた?」
歩きながら春菜がそう聞いてきた
「ううん、別に。なんで?」
「なんかボーッとしてたよ。こうやって」
春菜はそう言って、そのボーッとした様を再現してみせた
口を半開きにして上の空の目
「そんな顔してねーよ!」
「自分ではわかんないんだな!してたよ」