カベの向こうの女の子

俺は無表情のまま、"へー"と自分の中で呟いた



『残念だけど愛ちゃん彼氏いるよ』



あのロングヘアーは教師とできてるのか



さすがだな



美人はやっぱり大人と付き合うのな



その教師ってのは、この前のあの若い教師だろうな



俺にはあんな外道みたいに見といて、よく言う



自分だって十分やることやってんじゃねーか




あの教師だって…




誠実で真面目そうに見えても、結局は…ね




俺はあいつらの人間くささになんだか、笑えた



教師と生徒なんて、俺より浅はかな気がした



「波くん!」



俺は呼ばれて、我に返った


電灯の灯りが春菜の顔を照らす



相変わらずのかまぼこ型の目で俺に微笑んでくる



「おう」



「なんか考え事してた?」


歩きながら春菜がそう聞いてきた



「ううん、別に。なんで?」




「なんかボーッとしてたよ。こうやって」



春菜はそう言って、そのボーッとした様を再現してみせた



口を半開きにして上の空の目



「そんな顔してねーよ!」


「自分ではわかんないんだな!してたよ」



< 67 / 219 >

この作品をシェア

pagetop