カベの向こうの女の子
俺はようやく自分を取り戻して言葉を絞り出した
「ああ、俺の」
俺が手を出すと、彼女はフフッと笑って俺の手の上に鍵を置いた
「じゃあ」
彼女はそう言って背を向けた
黒いカーディガンを制服の上に着て、短めのスカートがひらりとした
駐車場の入り口には、彼女といつも登校してるロングヘアーの女子高生がいた
「はるな、早くー」
遠くロングの女子高生がそう言ったのが耳に入った
するとさっきまで俺の目の前にいた、あの子が小走りに遠ざかっていった
彼女の走る背中を見つめて、俺はお礼を言うのを忘れたと初めて気づいた
それでその日初めて春菜の名前を知ったんだ
俺は平気で何十分かそこに突っ立っていられた
考えなきゃいけないことがたくさんあった
頭を整理しないとどうにかなりそうになった