カベの向こうの女の子
蒸発しそうになりながら、やっと春菜のばあちゃん家に着いた
わりと田舎だ
庭が広く、道路の向こう側は田んぼだらけだ
それに隣の家との距離も遠い
車から降りて春菜は家を見つめながら伸びをした
「わー、久しぶり!連れてきてくれてありがとう」
俺は口元が緩んだ
そして答えようと口を開けた
「へー、こんなとこにあるんだね」
ロングヘアーが春菜にそう言ったから、俺は話すタイミングを失った
仕方ないから半端に開けた口を閉じた
なんて可哀想なんだ
春菜は門を抜けて玄関を開けた
「おばあちゃん、春菜だよー」
大きな声でそう言って、春菜は靴を脱ぎだす
俺とロングヘアーは開いたままのドアの側でそれを見つめる
俺たちにも入るように手招きしていたから、玄関に入った
他人の家のあの独特な匂いが鼻についた
玄関はよくある大きさで目の前には廊下があって、左右の壁にはドアがある
玄関の下駄箱の上には、いかにも老人が好きそうな干支の置物が飾ってある
少ししてばあちゃんが姿を表した
腰がやや曲がった小さいばあちゃんだ
「春菜ちゃん、久しぶりだねー。楽しみにしてたんだよ」
なんて言ってる
事前に来ること、伝えてたみたいだ