カベの向こうの女の子
図星をつかれて俺は黙った
「なんで好きなのかわかんないけど…、諦めたほうが身のためだと思う」
道路の窪みに水がたまって、小さな池ができる
俺らのことを天はまるで無視して、雨は徐々に大粒に変わって強く降る
髪が濡れてきた
「お前、なんでそんなに邪魔したがるんだよ?」
「あなたが一番、理由わかってるんじゃない?」
憎たらしい物言いに俺は顔が歪んだ
釣り合ってない…か
俺が気にしていたことすら、ロングヘアーは見透かしてたってこと
ここまで敏感ってのも、困りもんだな
「だからってお前は関係ないだろ」
「…確かに。でも親切のつもりなの」
どこが親切だっていうんだ
思わず失笑した
俺はロングヘアーが自分の意思だけで、邪魔したがってるようにしか思えない
「言ってることおかしいんじゃねーの」
ロングヘアーの髪も徐々に濡れていって、前髪に水が滴る
コートのポケットに手を入れて、真剣に俺を見てくる
ロングヘアーは小さくため息を吐いてから、口を開けた
「言っとくけど…、春菜、彼氏いるよ」
俺のこみかみに雨が伝って顎へ流れていった