カベの向こうの女の子
あれをならしてたのは、春菜だったのか
春菜ならすぐ出たのに…
なんで連絡しなかった
なんで俺は気づかないんだ
「ごめん…ほんと…」
俺は謝るしかなかった
また春菜は笑った
『いいよいいよ。てゆうか、どうしたのー?声、震えてるけど』
「うそ、声…?」
『うん、寒いの?』
俺は喉元に手を添えてみた
わからない
わからないけど
なんか動転していて多分そうなっているんだと思う
寒いから…ではないと思う
あとは春菜の声を聞けた感動で、心臓がバクバクしててそれが喉に伝わったんだと思う
もう衝動がおさえられない
手を下に下げて胸辺りの上着を握った
「春菜…」
『ん?』
携帯を握る力が自然と強くなる
「会えない?」
電話の奥で春菜が動転したのがわかった
『今日?』
「今日」
やっぱり俺は理性が弱い
春菜のことなんて考えずに、自分がそうしたいからこんなこと口に出すなんて自分勝手すぎる
わかってるけど
もう破裂したままで、中で渦巻いてた感情が流れだして止まらない