カベの向こうの女の子
『今日は午後からでかけるんだぁ』
遠回しに断った春菜に、俺はすぐに言った
「いいから。今から、少しでいいから…」
困ったように春菜は笑った
吐いた息が、こっちにも伝わってくる
『でも…、本当ちょっとしか会えないよ?』
俺はそれを了承した
家の前で、春菜は待っていてくれた
俺はすぐヘルメットを取って、バイクから下りた
春菜は俺に微笑みかけた
「波くん、久しぶ…」
俺の腕の中で春菜が驚いて体を揺らしたのがわかった
「…春菜」
「ど…、どうしたの…?」
やっぱり俺は理性が弱い
すぐに春菜の体温が俺の全身に伝わってきた
思いっきり抱き締めたら、すぐに崩れてしまいそうな体が悲しいと思った
こんな頼りない繊細な体で、 新年そうそう俺の家までわざわざハガキ1枚届けにきたのか
寒かったろうに
俺はよく春菜の気持ちを踏みにじったもんだ
勝手に落ち込んで、なんて小さいんだ、俺は