カベの向こうの女の子
ふと春菜はさりげなく家のほうに視線を移した
俺は時間を気にしてるんだなってすぐピンときた
「今日どこ行くん?」
「神社にお参り」
「ふーん、彼氏と?」
つい無意識に口に出た
言い終わってからはっとした
「違うよー。親戚と」
春菜は笑いとばした
否定されて不覚にも少し安堵した
それを悟られたくなくて、俺は早口で言った
絶対、間を空けたくなかった
「へー、親戚。彼氏とはどこも行かないんだ」
またしても、口に出してから我に返った
いらないこと言った
春菜は不思議そうに小さく笑った
「え?」
見つめられたから、俺は狼狽して目が泳いだ
執拗に詮索したように感じたのか
春菜に怪しまれたと思って俺は焦った
「どうしたの?行くも何も、あたし、彼氏いないよ」