カベの向こうの女の子

新事実




俺は靡く黒髪と細い背中に声をかけた



「待てよ」



相手は立ち止まってゆっくりこちらを振り返る



「…」



俺を見たが何も言わなかった



今日は都合よく1人だったみたいだ



春菜がいたらどう対処しようと思っていたところだった



「なんで嘘なんてついたんだよ」




理由はなんとなく察しがついたけど、会って聞かなきゃ腹の虫が収まらなかった



「バレた?」



ロングヘアーは少しの笑みも見せないで、言った






俺は怒りで頭が熱くなる



でも、こんな学校の目の前で女子高生に怒りをぶつけるのはさすがの俺もしない


てゆうより、できない




「そんな下らない嘘、すぐバレるわ」




「そう。諦めるかと思ったのに」



ロングヘアーは飄々とした態度だった




「なんでそこまでするんだよ」




この前、春菜に彼氏なんていないっていうことを告げられた



彼氏がいたなら後悔しただろう、俺の質問のおかげで偶然だけど、それが発覚した



それを聞いて本当のことだってわかった瞬間、天にも昇るように嬉しかった



家に帰ってもその喜びと春菜を抱き締めた時のあの体温が、全身を毒みたいに支配していた



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