カベの向こうの女の子
だけど、徐々に冷静になってみた
するとあの言葉が思い出された
『春菜、彼氏いるよ』
いないはずなのに、そう告げられた
それは嘘だった
俺はようやく気づいたんだ
「嘘ついたのは、ごめんなさい」
ロングヘアーは淡々と言った
「いくら友達でもおかしいんじゃねぇの」
言葉とは裏腹な彼女の態度に、つい口調にイラつきが現れる
自分でもわかった
でもそれを抑える気もしなかった
正直、嘘をついた代償はこれくらいじゃ足りないとも思った
「今日は春菜とは会わないの?」
「今日はあんたに会いに来た」
「わざわざ?」
俺は首を縦にふった
彼女は眉を下げた
「相当怒らせちゃったみたいね」
そう言った彼女は呆れたようにも見えた
ため息を吐いている
「普通そうなる」
「あんまりバレること考えてなくて」
彼女もまた春菜みたいに俺が怖くないみたいだ
まるで面倒くさい家事を親に頼まれた子供みたいな顔をしている
謝っておきながら、少しも反省していないのが窺える