カベの向こうの女の子
少し間をあけて、彼女は頭を擦りながら唸った
「うーん…、嘘だけど…」
地面を見つめている彼女を俺は真っ直ぐ見つめた
次の言葉を待った
怒りは全然収まる気配はない
まだ腹の奥が熱い
「嘘だけど…」
弁解をする気なのか…、
じれったくなる
「けど…、なに?」
「あながち間違ってないってゆーか…」
「は?」
彼女は地面から視線を上げた
「どのみち春菜はやめといたほうがいいよ」
いつもの冷めたあの冷淡な口調じゃなかった
ぶっきらぼうに当たり前みたいにアドバイスの言葉だ
そんなアドバイスを求めた覚えはなかった
それよりさっきの言葉が気になる
「好きな人…いるとか?」
「さぁ」
「はっきり言えよ」
憎たらしい彼女に情報を求めるのは、嫌だった
だけどそこまで聞いたら最後まで事情を聞きたい
ロングヘアーへの怒りより、春菜の事情を知りたい自分が勝っていた
「好きとかはわからない。春菜のことだし、あんまり言いたくない」