カベの向こうの女の子
なんて都合のいい奴なんだ
俺は呆れてため息が漏れた
ここまで中途半端にひけらかしといて、最終的に春菜を盾に言わないつもりか
俺の気持ちなんか一切考えていない
いや、考えてあえてこうして俺を苦しませるのか
だとしたら、思った以上に腹黒い、陰湿だ
「でも、2人で会ってるんだから、いくらでも本人に聞けるじゃない」
ロングヘアーはスパリと尖った刃物で紙を切るみたいに言った
それができたなら、俺だって苦労しないけど…
思わずぼやきそうだったが、やめた
それに春菜は自分のそういう色恋沙汰を人に、ましてや俺なんかに話すタイプじゃない
聞いても、空振りで終わる気がする
「もう、いい。わかった」
俺はロングヘアーに手のひらを出してそう言った
ただ嘘ついたこと、確認と謝らせたかっただけなのに、また嫌な情報を収穫した
しかもおんなじ奴から
一気に疲れがどっと肩を重くする
胸から全身に不安が渦巻いて広がっていく