堕ちていく二人
秘密


玲子と裕也がマンションに帰って来たのは夜の8時を過ぎていた。

桂司はまだ帰宅しておらず、室内は静まり返っていた。

玲子は貴之と撮ったプリクラを卒業アルバムにそっと仕舞った。
裕也は疲れて直ぐに眠っていた。

玲子はお風呂に入ってバスタブに深く浸かりながら貴之のことを思い浮かべた。

ぬるめのお湯に長い時間浸かっていたせいか、玲子の身体は変にほてり始めた。

そして、言いようのない衝動が、身体の芯から沸き上がってくるのを覚えた。

桂司が帰宅したのはいつものように日付が変わった頃だった。

玲子はそのことに気付いてはいたが、寝たふりをして顔を合わせようとはしなかった。

夫婦の寝室は裕也が生まれてからずっと別になっていた。

桂司も何も言わず自分の部屋へ入って行った。
玲子はその時の桂司の足音さえ嫌悪感を感じていた。


日曜日の夜、家族三人はいつものようにほとんど喋ることもなく食事を終えた。


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