堕ちていく二人
「どうなのよ!」
玲子は部屋中に響き渡る程の声で怒鳴りつけた。
「出来ればこのまま…」
猫に睨まれた鼠のように小さくなった亜美は、小声でそう答えるのがやっとだった。
おとなしそうな顔をして、虫のいい事を言うなと玲子は思った。
でも、桂司に対して愛情のかけらさえ失っていた玲子は、冷静になり落ち着いた口調で話しを続けた。
「貴女は桂司の何処がいい訳?」
「お兄さんのように優しいところです」
その言葉に玲子は鼻先で笑った。
「嘘を言うんじゃないわよ。何でも好きな物を買って貰えるからでしょう」
玲子は皮肉たっぷりに言った。
そして、また俯いてしまった亜美に
「そんなに桂司が好きならあげてもいいわ」
本心ではない言葉を吐き捨てた。
思ってもみない玲子の言葉に亜美は戸惑いを隠せなかった。