堕ちていく二人
そんな亜美に
「ただし、慰謝料はきっちりと貰うから」
と玲子は脅し文句を言った。
「慰謝料ですか…」
フリーターの亜美にそんなお金がある筈も無かった。
「当たり前でしょう。妻や子供がある男と不倫をしたんだから!」
玲子はそう言ってから、もう一本のタバコに火を付け
「自分の住所・氏名・親の名前・勤務先・電話番号と、今後一切桂司に会わないと誓約書を書きなさい」
睨みつけるように言った。
亜美が言われるとおりに書き終わっても、玲子は何も言わず天井を見上げ黙ってタバコの煙りを吐き出した。
しばらくの沈黙の後
「それではこれで失礼します…」
そう言い残して、亜美は脅えるように帰って行った。
その後ろ姿を見ながら、あれだけ言ったのだからあの娘も桂司から手を引くだろうと玲子は思った。
(つづく…)