堕ちていく二人
激怒
その夜、素面で帰宅した桂司に、玲子は亜美が書いた紙を見せつけた。
「これはいったいどういうことなの」
「・・・」
桂司は浮気の確固たる証拠を示されて少しだけたじろぎ、いつもと違う威圧的な態度の玲子に何も言えなかった。
桂司はお酒が入っている時は気が大きくなるのだが、素面の時は小心者で強い者には刃向かえない性格だった。
玲子と桂司の立場はいつもとは完全に逆転していた。
自分が優位な立場にたった玲子は、そんな弱気な桂司を見てまくし立てた。
「桂司の浮気には前から気付いていたけど、もう我慢が出来ないわ。
よりによって浮気相手の娘をこの家に連れて来るなんて、私は絶対に許せないわ。
あんなダサイ小娘のどこがいい訳。
私の方がずっと美人だしスタイルもいいわ。
それに比べたら大して男前でもないのに、よくもまあ次々と浮気が出来たものね。
あんたはね実家がお金持ちだけの、世間知らずのただのお坊ちゃまなのよ。
お金が無ければ、あんたなんかどんな女にも相手にされないわ!」
玲子の勢いに圧倒された桂司は視線を反らし、震える手でタバコに火を付け大きく煙を吸い込んだ。