堕ちていく二人
さらに玲子の攻撃は続いた。
「あんたはマザコンね。
だから、あんな小娘しか相手出来ないのよ。
どうせあの娘もあんたのお金が目当てでしょ。
今までの女だってみんなそうよ。
そんな単純なことすら分からないなんて、よっぽどの間抜けね。
この役立たず!」
玲子は自分自身でも信じられない程の強きな態度で、今まで溜まっていた鬱憤を爆発させた。
そんな悪態に黙って耐えていた桂司は、拳を握りしめブルブルと身体を震わせた。
「なによ、何か文句でもあるの。
やれるものならやってみなさいよ!」
先程まで黙って聞いていた桂司だったがそこまで言われて我慢しきれず、玲子の頬を一発殴って家を飛び出して行った。
桂司が素面で玲子に暴力をふるったのは今回が初めてだった。
「マザコンと役立たず」と言う二つの禁句が、素面の桂司をそうさせた。
言いたい事を全て吐き出し桂司に殴られた玲子は、その時何か吹っ切れたような気がした。